リリーフ弁は、回路の圧力が設定値に達したら油をタンクへ逃がし、回路の最高圧力を決める圧力制御弁です。設定圧力は、ばねがポペットを押す力と、油圧がポペットを押し返す力の釣り合いで決まります。
設定圧力 p = ばねの力 F ÷ ポペットの受圧面積 A
- 調整ハンドルで変えているのは、ばねの圧縮量(=ばねの力)
- 締める(右回し)→ ばねが縮む → 設定圧力が上がる。ゆるめる → 下がる
- 小流量は直動形、大流量はパイロット形
- リリーフしている油のエネルギーはすべて熱になる: 損失 [kW] = p [MPa] × Q [L/min] ÷ 60
- 「流量が出ない」の原因は、リリーフ弁ではなく配管の圧力損失であることも多い
役割
定容量形ポンプは、回転している限り一定量を吐出します。シリンダがストロークエンドに達して油の行き場がなくなると、圧力は機器が破損するまで上昇します(油圧回路の基本)。リリーフ弁はポンプ吐出口の近くに置き、この油をタンクへ逃がして最高圧力を制限します。
直動形
ばねがポペットを弁座に直接押しつける構造です。ポペットの座の直径を d とすると A = πd²/4、必要なばねの力は F = p × A(1 MPa = 1 N/mm²)です。
| 座の直径 d | 受圧面積 A | 14 MPa のばね力 | 21 MPa のばね力 |
|---|---|---|---|
| 6 mm | 28.27 mm² | 約 396 N | 約 594 N |
| 10 mm | 78.54 mm² | 約 1,100 N | 約 1,649 N |
| 20 mm | 314.16 mm² | 約 4,398 N | 約 6,597 N |
大流量を逃がすには座を大きくする必要がありますが、直径が 2 倍になるとばね力は 4 倍になります。20 mm・21 MPa では約 6.6 kN(約 670 kgf)となり、手動調整には向きません。このため直動形は、小流量の回路や安全弁に使われます。
パイロット形(バランスピストン形)
弁が 2 段になっています。
1. パイロット弁: 小さな直動形。ハンドルで調整するのはこの弁で、座が小さいためばね力も小さい2. 主弁: 上下の室に同じ圧力がかかって釣り合い、弱いばねで閉じている
圧力が設定値に達するとパイロット弁が開き、わずかな流れによって主弁の上下に差圧が生じます。この差圧で主弁が開き、大流量をタンクへ逃がします。小さなばねで大流量を制御でき、後述のオーバーライドも小さく抑えられます。
ベントポート
主弁の上部室につながるポートです。
- アンロード: 電磁弁でタンクに開放すると、主弁が低圧で開き、ポンプをほぼ無負荷で運転できる
- 遠隔制御: 別のリリーフ弁(リモートコントロール弁)をつなぐと、離れた位置から設定圧力を変えられる
プレッシャオーバーライド
リリーフ弁は、開き始めの圧力と全流量を逃がしているときの圧力が一致しません。
- クラッキング圧力: 弁が開き始める圧力
- 全流量時の圧力: 流量を逃がすためにポペットが大きく開き、ばねがさらに縮む分だけ高くなる
この差がプレッシャオーバーライドです。ばね定数を k、ポペットの追加の開き(ばねの追加圧縮)を Δx とすると、Δp ≈ k × Δx ÷ A で、直動形は大きく、パイロット形は小さくなります。
圧力の読み方
現場では、ハンドルをゆるめて油が逃げ始めた(吹き始めた)点の圧力を読む方法がよく使われます。この値はクラッキング圧力に近く、ポンプの全吐出量を逃がしているときの圧力とはオーバーライドの分だけ差があります。圧力計の値は、ほかにも次の条件で変わります。
- 圧力計の取り付け位置(ポンプ出口・弁の近く・アクチュエータの近く)
- 作動油の温度(粘度)
- リリーフ弁のタンク側の背圧
- メーカーの設定圧力の定義(どの流量・どの条件の値か。カタログの圧力-流量特性で確かめる)
リリーフ流量の発熱
リリーフ弁を通る油は仕事をせずに設定圧力から大気圧まで落ちるため、そのエネルギーはすべて熱になります(油圧装置の発熱量)。
| 設定圧力 | リリーフ流量 | 発熱 |
|---|---|---|
| 14 MPa | 20 L/min | 約 4.7 kW |
| 7 MPa | 20 L/min | 約 2.3 kW |
| 14 MPa | 5 L/min | 約 1.2 kW |
保持中にポンプの全吐出量をリリーフさせる回路は、油温が上がり続けます。夏季の運転で油温が 43℃ に達した例もあります。温度が上がると粘度が下がり、漏れの増加や作動油の劣化につながります。対策はアンロード回路、可変容量形ポンプ、クーラーの容量確認です。
流量不足の原因は配管のことがある
現場では「流量が出ない」ためリリーフ弁が疑われ、実際の原因は配管の内径不足だった、という例があります。定容量形ポンプとリリーフ弁の回路では、次の順で起きます。
1. 配管が細いと、同じ流量に対する圧力損失が大きくなる2. 負荷圧力に配管の圧力損失が加わり、ポンプ吐出圧力が上がる3. 吐出圧力がクラッキング圧力に達し、一部の油がタンクへ流れる4. アクチュエータへ行く油が減り、シリンダ速度が落ちる
流量の収支は次のとおりです。
Q(ポンプ)= Q(シリンダ)+ Q(リリーフ)+ Q(漏れ)
シリンダ速度は Q(シリンダ)÷ 受圧面積なので(シリンダの速度計算)、リリーフする分だけ遅くなります。弁は正常に働いているため、症状だけを見ると弁の不調に見えます。
ポンプ形式による違い
- 定容量形・リリーフ弁が閉じている間: 抵抗が増えても流量はほぼ一定(圧力上昇で漏れはわずかに増える)。増えるのは圧力とポンプ動力
- 圧力補償付き可変容量形: 補償圧力に近づくとポンプ自身が吐出量を減らすため、リリーフしていなくても流量が落ちる
細い配管の位置と症状
| 位置 | 主な症状 |
|---|---|
| ポンプ吸込側 | 吸込圧力低下、キャビテーション、吐出量不足(リリーフ弁とは別の現象) |
| ポンプ吐出側 | 圧力損失の増加、リリーフ開始による有効流量の低下 |
| シリンダ戻り側 | 背圧の増加、推力の低下、発熱 |
配管径と圧力損失の関係は、油圧配管の圧力損失の計算ツールで確かめられます。
調整の手順
実作業は、弁メーカーの取扱説明書と職場の手順を優先します。
1. ロックナットをゆるめ、ハンドルをゆるめて設定を下げておく2. ポンプを起動する(できれば無負荷)3. シリンダをストロークエンドに当てるなどして、リリーフ弁から油が逃げる状態にする4. 圧力計を見ながらハンドルを少しずつ締め、設定値まで上げる5. 一度下げてから上げ直し、同じ値になるか確かめる6. ロックナットを締める
- 機器(ポンプ・弁・シリンダ・ホース)の最高使用圧力を超えて設定しない
- 圧力計なしで、手応えだけで回さない
まとめ
- 設定圧力は p = F ÷ A。ハンドルはばね力を変えている
- 直動形は小流量、パイロット形は大流量。ベントでアンロード・遠隔制御ができる
- 開き始めと全流量時の圧力差がプレッシャオーバーライド。圧力計の値は読む条件で変わる
- リリーフ流量はすべて熱になる(p × Q ÷ 60 kW)
- 流量不足は、配管の圧力損失によるリリーフ開始が原因のことがある。ポンプ形式と配管の位置で症状が変わる
