電気回路の計算は、まず単位と符号をそろえるところから始まります。電荷、電流、電圧、電力、エネルギーを分けておくと、式の意味と計算結果の符号を同じ線で読めます。
STEP 1 / 16|機械・油圧技術者が電気回路を計算して読むための基礎
$$I = \frac{Q}{t},\quad P = VI,\quad E = Pt,\quad 1 \mathrm{Wh} = 3,600 \mathrm{J}$$
- 電荷 \(Q\) は「量」、電流 \(I\) は「流れる速さ」、電圧 \(V\) は「1 C あたりのエネルギー差」です。
- A、C、V、W、Wh、J は、式に入れる前に関係をそろえます。特に min → s、h → s、mA → A、Wh → J の換算を先に済ませます。
- 電流の仮定方向と電圧極性は、計算の前に決めます。逆なら結果が負になります。
- 電力 \(P\) は瞬時の仕事率、エネルギー \(E\) は時間で積算した量です。
- Wh と J を換算できると、機器の消費量と物理量をつなげて読めます。
電荷・電流・電圧を同じ軸で見る
電荷 \(Q\) は、電気の量です。単位は C(クーロン)です。電流 \(I\) は、単位時間あたりに通過する電荷の量です。
$$I = \frac{Q}{t}$$
- \(I\): 電流 [A]
- \(Q\): 電荷 [C]
- \(t\): 時間 [s]
1 A は 1 秒に 1 C が流れる量なので、\(1 \mathrm{A} = 1 \mathrm{C/s}\) です。たとえば \(I = 2.5 \mathrm{A}\)、\(t = 12 \mathrm{min}\) なら、先に時間を秒へ直します。
\(12 \mathrm{min} = 12 \times 60 = 720 \mathrm{s}\) なので、
$$Q = It = 2.5 \mathrm{A} \times 720 \mathrm{s} = 1,800 \mathrm{C}$$
流れる量 \(Q\) が同じでも、時間 \(t\) が長いほど電流 \(I\) は小さくなります。だから電流は「総量」ではなく「速さ」として読みます。
| 電流 I | 1 min の Q | 10 min の Q | 60 min の Q |
|---|---|---|---|
| 0.5 A | 30 C | 300 C | 1,800 C |
| 1.0 A | 60 C | 600 C | 3,600 C |
| 2.5 A | 150 C | 1,500 C | 9,000 C |
| 5.0 A | 300 C | 3,000 C | 18,000 C |
電圧 \(V\) は、2 点間で 1 C の電荷あたりに対応するエネルギー差です。単位は V(ボルト)です。
$$V = \frac{W}{Q}$$
- \(V\): 電圧 [V]
- \(W\): 仕事、エネルギー [J]
- \(Q\): 電荷 [C]
1 V は 1 C あたり 1 J のエネルギー差なので、\(1 \mathrm{V} = 1 \mathrm{J/C}\) です。\(W = 18 \mathrm{J}\)、\(Q = 3 \mathrm{C}\) なら、
$$V = \frac{18 \mathrm{J}}{3 \mathrm{C}} = 6.0 \mathrm{V}$$
1 C あたりのエネルギー差が大きいほど、電圧は高くなります。だから電圧は、電位差として回路の 2 点を結ぶ量として扱います。ただし電圧は必ず「2 点間の差」です。単独の点に 12 V と書くときは、0 V と決めた基準点に対する値です。
| Q | W = 6 J | W = 12 J | W = 24 J | W = 60 J |
|---|---|---|---|---|
| 1 C | 6.0 V | 12 V | 24 V | 60 V |
| 3 C | 2.0 V | 4.0 V | 8.0 V | 20 V |
| 6 C | 1.0 V | 2.0 V | 4.0 V | 10 V |
| 12 C | 0.5 V | 1.0 V | 2.0 V | 5.0 V |
なお、回路計算で使う電流の向きは、慣習的な「正の電荷が流れる向き」です。電子の移動方向は逆ですが、ここでは混ぜずに電流方向で統一します。
A・C・V・W・J・Wh をそろえる
式に入れる前に単位をそろえると、計算の意味が崩れません。基本の関係は次の 4 つです。
$$1 \mathrm{A} = 1 \mathrm{C/s}$$
$$1 \mathrm{V} = 1 \mathrm{J/C}$$
$$1 \mathrm{W} = 1 \mathrm{J/s}$$
$$1 \mathrm{Wh} = 3,600 \mathrm{J}$$
W(ワット)は電力、Wh(ワット時)はエネルギーです。名前が似ていますが、時間を掛けたかどうかで意味が変わります。
たとえば \(2.5 \mathrm{A}\) を \(12 \mathrm{min}\) 流したときの電荷は、
\(12 \mathrm{min} = 720 \mathrm{s}\) より、
$$Q = 2.5 \mathrm{C/s} \times 720 \mathrm{s} = 1,800 \mathrm{C}$$
A と s が結びつくと、電流を「毎秒どれだけ流れるか」で読めます。だから、min や h のまま式へ入れず、秒へ直してから代入します。
| 時間 | 秒に直した値 | 2.5 A のときの Q |
|---|---|---|
| 1 s | 1 s | 2.5 C |
| 1 min | 60 s | 150 C |
| 10 min | 600 s | 1,500 C |
| 1 h | 3,600 s | 9,000 C |
次に、\(12 \mathrm{V}\)、\(3 \mathrm{A}\) の負荷を \(1 \mathrm{h}\) 動かす場合です。電力は後で詳しく扱いますが、ここでは \(P = VI\) を使います。
$$P = 12 \mathrm{V} \times 3 \mathrm{A} = 36 \mathrm{W}$$
1 h 動かすので、
$$E = 36 \mathrm{W} \times 1 \mathrm{h} = 36 \mathrm{Wh}$$
J に直すと、\(1 \mathrm{h} = 3,600 \mathrm{s}\) なので、
$$E = 36 \mathrm{J/s} \times 3,600 \mathrm{s} = 129,600 \mathrm{J}$$
Wh と J の差を押さえると、設備の消費電力量と瞬時電力を混同しません。電力量を求めるときは、電力に運転時間を掛けます。
| 電力 | 1 h 当たりの Wh | J に換算 |
|---|---|---|
| 1 W | 1 Wh | 3,600 J |
| 10 W | 10 Wh | 36,000 J |
| 100 W | 100 Wh | 360,000 J |
| 1 kW | 1,000 Wh | 3,600,000 J |
電力は電圧と電流の積で決まる
電力 \(P\) は、単位時間あたりに電気がする仕事です。直流の定常状態では、次の式で扱います。
$$P = VI$$
- \(P\): 電力 [W]
- \(V\): 電圧 [V]
- \(I\): 電流 [A]
\(V = 12 \mathrm{V}\)、\(I = 3 \mathrm{A}\) なら、
$$P = 12 \mathrm{V} \times 3 \mathrm{A} = 36 \mathrm{W}$$
電圧が同じなら、電流が増えるほど電力は比例して増えます。だから負荷の大きさは、A だけでなく W でも見ます。
抵抗 \(R\) が分かる部品では、後で扱う抵抗の関係 \(V = IR\) と組み合わせて、次の形にもできます。
$$P = I^2R$$
$$P = \frac{V^2}{R}$$
- \(R\): 抵抗 [Ω]
たとえば \(R = 6 \Omega\)、\(V = 12 \mathrm{V}\) なら、
$$I = \frac{V}{R} = \frac{12 \mathrm{V}}{6 \Omega} = 2.0 \mathrm{A}$$
$$P = VI = 12 \mathrm{V} \times 2.0 \mathrm{A} = 24 \mathrm{W}$$
同じ条件を \(P = V^2/R\) で計算しても、
$$P = \frac{(12 \mathrm{V})^2}{6 \Omega} = \frac{144}{6} = 24 \mathrm{W}$$
また \(R = 6 \Omega\)、\(I = 2.0 \mathrm{A}\) なら、
$$P = I^2R = (2.0 \mathrm{A})^2 \times 6 \Omega = 24 \mathrm{W}$$
同じ 12 V をかけても、抵抗が小さいほど電流が増え、電力も増えます。
| R | V = 12 V のときの I | P |
|---|---|---|
| 1 Ω | 12 A | 144 W |
| 2 Ω | 6.0 A | 72 W |
| 6 Ω | 2.0 A | 24 W |
| 12 Ω | 1.0 A | 12 W |
一方、抵抗を 6 Ω に固定すると、電流の 2 乗で電力が増えます。電流が 2 倍なら、発熱に関係する電力は 4 倍です。
| I | R = 6 Ω のときの P |
|---|---|
| 1 A | 6 W |
| 2 A | 24 W |
| 3 A | 54 W |
| 4 A | 96 W |
電力と電流の関係は、LED の電流制限でも使います。
エネルギーは電力を時間で積算した量
エネルギー \(E\) は、電力 \(P\) を時間 \(t\) だけ積算した量です。定常負荷では次の式で計算できます。
$$E = Pt$$
- \(E\): エネルギー [J] または [Wh]
- \(P\): 電力 [W]
- \(t\): 時間 [s] または [h]
\(P = 36 \mathrm{W}\)、\(t = 1 \mathrm{h}\) なら、
$$E = 36 \mathrm{W} \times 1 \mathrm{h} = 36 \mathrm{Wh}$$
J では、
$$E = 36 \mathrm{J/s} \times 3,600 \mathrm{s} = 129,600 \mathrm{J}$$
\(P = 12 \mathrm{W}\)、\(t = 30 \mathrm{min}\) なら、\(30 \mathrm{min} = 0.5 \mathrm{h} = 1,800 \mathrm{s}\) です。
$$E = 12 \mathrm{W} \times 0.5 \mathrm{h} = 6.0 \mathrm{Wh}$$
$$E = 12 \mathrm{J/s} \times 1,800 \mathrm{s} = 21,600 \mathrm{J}$$
電力は瞬間の大きさ、エネルギーは時間積算です。短時間の大電力と長時間の小電力は、同じエネルギーになることがあります。
| P | 10 min | 1 h | 8 h |
|---|---|---|---|
| 10 W | 1.67 Wh / 6,000 J | 10 Wh / 36,000 J | 80 Wh / 288,000 J |
| 50 W | 8.33 Wh / 30,000 J | 50 Wh / 180,000 J | 400 Wh / 1,440,000 J |
| 100 W | 16.7 Wh / 60,000 J | 100 Wh / 360,000 J | 800 Wh / 2,880,000 J |
| 500 W | 83.3 Wh / 300,000 J | 500 Wh / 1,800,000 J | 4,000 Wh / 14,400,000 J |
同じ W でも、動作時間が長いほど \(E\) は比例して増えます。保全で消費量や発熱の影響を見るときは、起動時の大きさだけでなく稼働時間も見ます。
| 時間 | P = 36 W のときの E |
|---|---|
| 1 min | 0.60 Wh / 2,160 J |
| 10 min | 6.0 Wh / 21,600 J |
| 1 h | 36 Wh / 129,600 J |
| 8 h | 288 Wh / 1,036,800 J |
電流の向きと電圧極性を先に決める
回路図では、電流の仮定方向を先に置きます。次に、電圧の + と − を決めます。計算で負号が出たら、実際の向きが仮定と逆だったと読みます。
ここでは、受動符号規約を使います。これは「電流が部品の + 側へ入る向きを正にする」決め方です。この決め方なら、\(P = VI\) の正負で、部品が電力を吸収しているか供給しているかを読めます。
6 Ω の抵抗で、左端を +、右端を − とし、左から右へ電流を仮定します。左端が右端より 12 V 高いなら、
$$I = \frac{12 \mathrm{V}}{6 \Omega} = 2.0 \mathrm{A}$$
$$P = 12 \mathrm{V} \times 2.0 \mathrm{A} = 24 \mathrm{W}$$
電流は仮定どおり左から右です。電力が正なので、この抵抗は 24 W を吸収します。
同じ仮定で、計算結果が \(I = -2.0 \mathrm{A}\) になった場合は、実際の電流が右から左へ 2.0 A 流れている、という意味です。負号は物理量が壊れた意味ではなく、選んだ基準と逆向きという情報です。
| 置き方 | 式に入る V | 仮定した I | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 左を +、右を −。電流は左→右 | +12 V | +2.0 A | 仮定どおり左→右 |
| 左を +、右を −。電流は左→右 | -12 V | -2.0 A | 実際は右→左 |
| 右を +、左を −。電流は右→左 | +12 V | +2.0 A | 仮定どおり右→左 |
電源では符号の読み方が特に効きます。12 V の電源から 3 A が + 端子から外へ出ている場合、受動符号規約では「+ 端子へ入る電流」を正にするので、その電流は \(I = -3 \mathrm{A}\) です。
$$P = 12 \mathrm{V} \times (-3 \mathrm{A}) = -36 \mathrm{W}$$
電力が負なので、この電源は外部へ 36 W を供給しています。向きを先に決めると、式の符号が一貫します。だから複数の式を使うときも、途中で向きを変えません。
現場で値がずれる条件を見る
理論式では、測っている 2 点と電流の枝がはっきりしている前提です。実際の盤や装置では、測定位置、配線抵抗、温度、計器の内部抵抗で値がずれます。
たとえば電源端子で 12.0 V、負荷端子で 11.4 V、負荷電流が 3.0 A だったとします。負荷で使われる電力は、負荷端子電圧で計算します。
$$P_{load} = 11.4 \mathrm{V} \times 3.0 \mathrm{A} = 34.2 \mathrm{W}$$
電源端子の 12.0 V で計算すると、
$$P = 12.0 \mathrm{V} \times 3.0 \mathrm{A} = 36.0 \mathrm{W}$$
差は \(36.0 – 34.2 = 1.8 \mathrm{W}\) です。電圧降下は \(12.0 – 11.4 = 0.6 \mathrm{V}\) なので、配線側で失われる電力は、
$$P_{wire} = 0.6 \mathrm{V} \times 3.0 \mathrm{A} = 1.8 \mathrm{W}$$
測る位置が違うと \(V\) が変わります。すると同じ 3.0 A を掛けても、計算される \(P\) は変わります。だから回路図やメモには、電源端子、負荷端子、配線途中のどこで測ったかを書きます。
| 測定位置 | 測定電圧 | 3.0 A としたときの V×I | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 電源端子 | 12.0 V | 36.0 W | 電源側から見た値 |
| 配線途中 | 11.7 V | 35.1 W | 配線の途中まで降下後 |
| 負荷端子 | 11.4 V | 34.2 W | 負荷に実際に掛かる値 |
電流も同じです。分岐がある回路で \(I = 3 \mathrm{A}\) とだけ書くと、全体の電流か、ある枝の電流かが分かりません。\(P = VI\) に入れる電流は、その電圧を測った負荷や枝を流れる電流です。
抵抗値は温度でも変わります。ここでは代表的な影響を見るため、6 Ω の抵抗が温度で 1.00 倍、1.10 倍、1.25 倍になったと仮定します。12 V をかけると、電流と電力は次のように変わります。
| 条件 | R | I = V/R | P = V²/R |
|---|---|---|---|
| 常温相当 | 6.0 Ω | 2.00 A | 24.0 W |
| やや高温相当 | 6.6 Ω | 1.82 A | 21.8 W |
| 高温相当 | 7.5 Ω | 1.60 A | 19.2 W |
温度で \(R\) が変わると、\(I\) と \(P\) も変わります。だから理論値は代表値として扱い、測定条件と部品の温度を切り分けて見ます。
符号と単位のミスを計算前に潰す
単位ミスは、式そのものが合っていても結果を大きく外します。特に A と mA、min と s、W と Wh は混同しやすい単位です。
3 A は、正しく換算すれば 3,000 mA です。
$$3 \mathrm{A} = 3 \times 1,000 = 3,000 \mathrm{mA}$$
しかし 3 mA を 3 A として扱うと、電流は 1,000 倍です。12 V の負荷なら、
$$P = 12 \mathrm{V} \times 3 \mathrm{A} = 36 \mathrm{W}$$
$$P = 12 \mathrm{V} \times 0.003 \mathrm{A} = 0.036 \mathrm{W}$$
36 W と 0.036 W では 1,000 倍違います。だから mA は、式に入れる前に A へ直します。
| 表記 | A に直す | 10 s 流したときの Q |
|---|---|---|
| 1 mA | 0.001 A | 0.010 C |
| 10 mA | 0.010 A | 0.10 C |
| 1 A | 1.0 A | 10 C |
| 10 A | 10 A | 100 C |
時間の単位も、そのまま結果へ効きます。\(I = 2.5 \mathrm{A}\) で 12 min 流した場合は、
$$12 \mathrm{min} = 720 \mathrm{s}$$
$$Q = 2.5 \mathrm{A} \times 720 \mathrm{s} = 1,800 \mathrm{C}$$
12 s と読んでしまうと、
$$Q = 2.5 \mathrm{A} \times 12 \mathrm{s} = 30 \mathrm{C}$$
差は \(1,800/30 = 60\) 倍です。時間の単位を間違えると、\(Q\) と \(E\) はそのままずれます。
| 時間 | 秒に直した値 | I = 2.5 A の Q |
|---|---|---|
| 1 s | 1 s | 2.5 C |
| 60 s | 60 s | 150 C |
| 600 s | 600 s | 1,500 C |
| 3,600 s | 3,600 s | 9,000 C |
符号のミスは、電流方向を途中で変えたときに起きます。負号が出たら、まず「仮定した向きと逆ではないか」を見ます。そこで向きを描き直してから、電力が吸収か供給かを読みます。
まとめ
- \(Q\) は量、\(I\) は量の流れる速さ、\(V\) は 1 C あたりのエネルギー差です。
- \(P = VI\) は瞬時の仕事率、\(E = Pt\) は時間で積算したエネルギーです。
- min、h、mA、Wh は、式に入れる前に s、A、J との関係を確認します。
- 電流方向と電圧極性を先に決めると、負号を「逆向き」の情報として読めます。
- 実測では、測定位置、分岐、温度、配線抵抗で値が変わります。
このステップの前後
- 次のステップ: オームの法則で読む抵抗回路|電圧降下・電流制限・抵抗値の決め方
- 全体の地図: 機械・油圧技術者が電気回路を計算して読むための基礎
