電気回路は、電源から負荷、帰り道までの電圧・電流・抵抗・電力を、同じ単位系で数値として追う手順です。回路図は記号を覚えるだけでは読めませんが、基準点と単位をそろえて式に落とすと、どこで電圧が下がり、どこで電力が熱になるかを判断できます。
$$V = IR$$
基本は \( V = IR \)、電力は \( P = VI \) です。
- 最初に 記号と単位 をそろえます。よく使うのは A、V、Ω、W、Wh です
- 直流抵抗回路で、合成抵抗・分圧・分流を計算します
- KCL、KVL、内部抵抗を入れると、実回路の未知量を追えます
- 電力、発熱、配線損失まで見ると、部品定格を判断できます
- RC・RL の過渡現象を使うと、センサやコイルの時間変化を扱えます
- その上で交流、半導体、制御入出力へ進むと、制御盤の回路を数値で読めるようになります
単位と基準点を先にそろえると、回路図を数値で追える
電気回路は、単位・電流方向・電圧極性・基準点がそろわないと、式が合っていても意味が崩れます。だから最初に A、V、Ω、W、Wh と、どこを 0 V とみなすかをそろえます。ここが固まると、回路図の読み違いが減り、後の KCL や KVL でも符号を迷いにくくなります。
まず使う式は、抵抗に流れる電流と電圧降下の関係です。
$$V = IR$$
V: 電圧 [V]、I: 電流 [A]、R: 抵抗 [Ω] です。
10 Ω に 2 A を流すと、
$$V = IR = 2 \times 10 = 20 \mathrm{\,V}$$
です。電流が増えるほど電圧降下が大きくなるので、配線や抵抗の値を先に読む必要があります。だから設計では、電源電圧だけでなく、途中で何 V 落ちるかまで見ます。
電力は次の式で見ます。
$$P = VI$$
P: 電力 [W]、V: 電圧 [V]、I: 電流 [A] です。
100 mA は
$$100 \mathrm{\,mA} = 0.100 \mathrm{\,A}$$
なので、24 V と 100 mA なら
$$P = VI = 24 \times 0.100 = 2.40 \mathrm{\,W}$$
です。電流制限を先に読むと部品の定格を外しにくくなり、発熱トラブルを避けやすくなります。
| 量 | 記号 | よく使う単位 | 関係 |
|---|---|---|---|
| 電流 | I | A、mA | 電荷の流れ |
| 電圧 | V | V | 二点間の電位差 |
| 抵抗 | R | Ω、kΩ | 電流の流れにくさ |
| 電力 | P | W | \( P = VI \) |
| エネルギー | E | Wh | 電力と時間の積 |
学ぶ順番は、未知量の数を少しずつ増やすためです
このロードマップは、基礎量から制御入出力までを一続きで進みます。基礎量を先に学ぶと、後の式の記号が迷子にならず、計算の検算ができます。さらに、抵抗回路で電圧と電流の分配を追えるようになると、RC・RL の時間変化でも「最終的にどこへ向かうか」を見失いにくくなります。
| 段階 | 扱う内容 | 到達点 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 単位、電圧、電流、抵抗、電力 | 直流回路を数値で追える |
| 第2段階 | 直列、並列、KCL、KVL、内部抵抗 | 回路図の未知量を解ける |
| 第3段階 | 電力、発熱、配線損失、RC、RL | エネルギーと時間変化を扱える |
| 第4段階 | 交流、実効値、位相、半導体 | AC とスイッチ素子を読める |
| 第5段階 | リレー、ソレノイド、センサ入力 | 制御盤の入出力を追える |
時間変化は、定常回路を固めてから扱います。先に抵抗回路を理解しておくと、過渡現象で「どこへ収束するか」と「どのくらいの速さで変わるか」を分けて考えられるからです。
直流抵抗回路で、電圧・電流・内部抵抗を追う
まずは直流抵抗回路で、合成抵抗、分圧、分流を計算します。ここで KCL と KVL を使えるようになると、回路図の未知量を枝ごとに追えます。
電流はオームの法則を変形して求めます。
$$I = \frac{V}{R}$$
I: 電流 [A]、V: 電圧 [V]、R: 抵抗 [Ω] です。
5 kΩ は
$$5 \mathrm{\,k\Omega} = 5 \times 1000 = 5000 \mathrm{\,\Omega}$$
です。5 kΩ と 10 V なら
$$I = \frac{V}{R} = \frac{10}{5000} = 0.00200 \mathrm{\,A} = 2.00 \mathrm{\,mA}$$
です。
分圧も、KVL を使うと電源電圧のどこが各抵抗に割り当てられるかで説明できます。たとえば 12 V 電源に 1 kΩ と 2 kΩ を直列につなぐと、合成抵抗は
$$R_\mathrm{total} = 1000 + 2000 = 3000 \mathrm{\,\Omega}$$
なので、回路電流は
$$I = \frac{12}{3000} = 0.00400 \mathrm{\,A}$$
です。2 kΩ にかかる電圧は
$$V_{2\mathrm{k}} = IR = 0.00400 \times 2000 = 8.00 \mathrm{\,V}$$
です。だから設計では、電源電圧が 12 V でも、負荷端子にそのまま 12 V が来るとは限らないとわかります。
内部抵抗を入れると、理想電源との差も追えます。たとえば起電力 24 V、内部抵抗 1 Ω の電源に 11 Ω の負荷をつなぐと、全抵抗は
$$R_\mathrm{total} = 1 + 11 = 12 \mathrm{\,\Omega}$$
です。回路電流は
$$I = \frac{24}{12} = 2.00 \mathrm{\,A}$$
となります。負荷電圧は
$$V_\mathrm{load} = IR = 2.00 \times 11 = 22.0 \mathrm{\,V}$$
です。内部抵抗で 2.00 V 落ちるので、電源が 24 V 表示でも負荷には 24 V かかりません。だから大電流回路では、電源電圧だけでなく電源の内部抵抗や配線抵抗も確認します。
| 条件 | 電流 I [A] | 抵抗の電圧降下 V [V] | 電力 P [W] |
|---|---|---|---|
| 10 Ω に 1 A | 1.00 | 10.0 | 10.0 |
| 10 Ω に 2 A | 2.00 | 20.0 | 40.0 |
| 10 Ω に 3 A | 3.00 | 30.0 | 90.0 |
| 10 Ω に 4 A | 4.00 | 40.0 | 160 |
同じ 10 Ω でも、電流が 2 倍になると電圧降下は 2 倍、電力は 4 倍になります。だから配線や抵抗の過熱は、電流増加に対して急に厳しくなります。
電力と発熱まで見ると、部品定格の判断につながる
電力の単位は、次のように電圧と電流の積です。
$$1 \mathrm{\,W} = 1 \mathrm{\,V} \times 1 \mathrm{\,A}$$
12 V、2 A なら
$$P = 12 \times 2 = 24 \mathrm{\,W}$$
です。抵抗値だけでなく電力まで見ると、発熱と定格の判断につながります。
抵抗の発熱は、電流からも求められます。
$$P = I^2R$$
P: 電力 [W]、I: 電流 [A]、R: 抵抗 [Ω] です。
100 Ω に 24 V をかけると、まず電流は
$$I = \frac{V}{R} = \frac{24}{100} = 0.240 \mathrm{\,A}$$
です。したがって
$$P = I^2R = 0.240^2 \times 100 = 5.76 \mathrm{\,W}$$
です。電力まで見るから、抵抗値だけでなく定格も判断できます。
配線損失も同じ考え方で見ます。たとえば配線抵抗が 0.50 Ω、電流が 3.00 A なら、配線で消費する電力は
$$P_\mathrm{wire} = I^2R = 3.00^2 \times 0.50 = 4.50 \mathrm{\,W}$$
です。配線自体が発熱源になるので、長いケーブルや大電流回路では無視できません。
| 抵抗 R | 印加電圧 V | 電流 I | 電力 P |
|---|---|---|---|
| 100 Ω | 12 V | 0.120 A | 1.44 W |
| 100 Ω | 24 V | 0.240 A | 5.76 W |
| 200 Ω | 24 V | 0.120 A | 2.88 W |
| 500 Ω | 24 V | 0.0480 A | 1.15 W |
同じ抵抗では、電圧が 2 倍になると電流は 2 倍、電力は 4 倍になります。だから 12 V 用の回路を 24 V に置き換えるときは、抵抗値だけでなく定格も見直します。
RC・RL の一次回路で、時間変化を読む
RC・RL の過渡現象を使うと、センサ入力の遅れやコイル電流の立上りを説明できます。ここでは一次の直列 RC 回路、一次の直列 RL 回路を前提にします。
RC 回路の時定数は次の式です。
$$\tau = RC$$
\( \tau \): 時定数 [s]、R: 抵抗 [Ω]、C: 静電容量 [F] です。
100 µF は
$$100 \mathrm{\,\mu F} = 100 \times 10^{-6} \mathrm{\,F}$$
なので、1000 Ω と 100 µF なら
$$\tau = RC = 1000 \times 100 \times 10^{-6} = 0.100 \mathrm{\,s}$$
です。時定数を見ると、入力が急に変わっても出力がすぐには追従しないことを説明できます。
RL 回路の時定数は次の式です。
$$\tau = \frac{L}{R}$$
\( \tau \): 時定数 [s]、L: インダクタンス [H]、R: 抵抗 [Ω] です。
10 mH は
$$10 \mathrm{\,mH} = 0.010 \mathrm{\,H}$$
なので、10 mH と 20 Ω なら
$$\tau = \frac{L}{R} = \frac{0.010}{20} = 0.000500 \mathrm{\,s}$$
です。RL では抵抗が大きいほど時定数は小さくなり、同じコイルでも電流の立上りは速くなります。だから駆動回路では、コイルだけでなく直列抵抗や配線抵抗も応答速度に効きます。
コンデンサにたまる電荷は次の式です。
$$Q = CV$$
Q: 電荷 [C]、C: 静電容量 [F]、V: 電圧 [V] です。
100 µF に 5 V を加えると、
$$Q = CV = 100 \times 10^{-6} \times 5 = 500 \times 10^{-6} \mathrm{\,C}$$
です。
つまずきやすい点は、符号・基準点・定義の違いです
電流の向きと電子の流れは混同しやすい所です。回路計算では、まず仮定した電流方向で式を立てます。結果が負なら、実際の向きが仮定と逆だったと判断します。
電圧は一点の値ではなく、二点間の差です。接地点や基準点が変わると、見かけの電圧も変わります。基準点を固定すると、電圧の読み違いを減らせます。
コイルでは、電流変化に対抗する向きの自己誘導電圧が端子間に現れます。これを表す代表式は次です。
$$v = L\frac{di}{dt}$$
v: コイル両端の電圧 [V]、L: インダクタンス [H]、\( di/dt \): 電流変化率 [A/s] です。
10 mH は \( 0.010 \mathrm{\,H} \)、1 ms は \( 0.001 \mathrm{\,s} \) です。10 mH に 2 A の電流変化を 1 ms で与えると、電圧の大きさは
$$v = L\frac{di}{dt} = 0.010 \times \frac{2}{0.001} = 20 \mathrm{\,V}$$
です。電流変化が速いほど誘導電圧は大きくなるので、リレーやソレノイドでは保護素子の有無が誤動作と部品破損を左右します。
| 症状 | 原因 | 確かめ方 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 電流値が合わない | 直列と並列の取り違え | 同じ電流が流れる枝か確認 | 接続点を描き直す |
| 電圧が想定と違う | 基準点の誤認 | 測定器の黒リード位置を確認 | GND と測定点を明記する |
| コイルで誤動作する | 逆起電力を見ていない | 電流変化時間を確認 | 保護素子を検討する |
| AC の値が合わない | 実効値とピーク値の混同 | 表示値の定義を確認 | RMS かピークかを書く |
制御回路へ進む前に、理論値と実測値がずれる条件を押さえる
最終的には、24 V DC 回路の LED 直列抵抗、リレーやソレノイドの駆動、センサ入力のプルアップや分圧を、自分の手で計算して読める状態を目指します。たとえば LED 直列抵抗は、電源電圧だけでなく LED の順方向電圧と目標電流で決まります。半導体の入口では、個別記事の LED直列抵抗の計算 に進むと、電流制限の考え方を数値で確認できます。
現場では、理論値と実測値は完全には一致しません。温度、部品の許容差、負荷状態、測定位置、カタログ値の定義で値がずれます。代表例は次のとおりです。
- 抵抗は温度で値が変わるので、通電後に電流が少しずれることがあります
- 電源の内部抵抗や配線抵抗で、負荷電圧が理論値より下がります
- コイルやコンデンサは公称値から外れるため、時定数は計算値どおりにならないことがあります
- 測定器の入力抵抗や測定位置で、見える電圧が変わります
- AC では、実効値・平均値・ピーク値のどれを示すかで数値の意味が変わります
計算値を基準にし、測定値との差が説明できるかを確認します。だから回路図を読む力は、式を覚えることだけでなく、どの条件で値が変わるかを切り分ける力でもあります。
ステップ(3 / 16 本を公開)
| ステップ | 記事 | 読むとできるようになること |
|---|---|---|
| STEP 1 | 電気の単位と符号|電荷・電流・電圧・電力・エネルギーの換算と向きの決め方 | A、V、Ω、W、Whを相互に換算し、回路図上の電流方向と電圧極性を決めて計算できるようになる。 |
| STEP 2 | オームの法則で読む抵抗回路|電流・電圧降下・抵抗値の決め方 | V=IRを使い、抵抗に流れる電流、抵抗両端の電圧、必要な抵抗値を計算できるようになる。 |
| STEP 3 | 直列・並列回路の計算|合成抵抗・分圧・分流の基本式を整理する | 直列抵抗と並列抵抗を合成し、各抵抗にかかる電圧と流れる電流を計算できるようになる。 |
| STEP 4 | キルヒホッフの法則|節点法と閉路法で複数ループ回路を解く(準備中) | KCLとKVLを使い、分岐とループを含む直流抵抗回路の未知電流・未知電圧を求められるようになる。 |
| STEP 5 | 電源と負荷の考え方|内部抵抗・電圧降下・テブナン等価回路(準備中) | 電源を理想電圧源だけでなく内部抵抗を持つモデルとして扱い、負荷接続時の端子電圧と電流を計算できるようになる。 |
| STEP 6 | 電力と発熱の計算|W・Wh・抵抗定格・配線損失(準備中) | P=VI、P=I²R、P=V²/Rを使い、部品の発熱、消費電力、エネルギー量、配線の電圧降下を見積もれるようになる。 |
| STEP 7 | 回路図記号と電源ラインの読み方|スイッチ・接点・GND・ヒューズ(準備中) | 基本記号、電源ライン、GND、接点、ヒューズを識別し、電流がどの経路で流れるかを追えるようになる。 |
| STEP 8 | コンデンサとRC過渡現象|充放電・時定数・リップル電圧(準備中) | C、Q=CV、i=Cdv/dt、時定数τ=RCを使い、充放電時間と簡単な平滑回路の電圧変動を計算できるようになる。 |
| STEP 9 | コイルとインダクタンス|RL過渡・逆起電力・フライバック電圧(準備中) | v=Ldi/dtとτ=L/Rを使い、コイル電流の立上がり、遮断時の逆起電力、保護ダイオードの役割を計算で説明できるようになる。 |
| STEP 10 | 交流の基本|正弦波・周波数・実効値・位相を計算する(準備中) | ピーク値、実効値、周期、周波数、位相差を換算し、AC100 VやAC24 Vの意味を数値で扱えるようになる。 |
| STEP 11 | 交流インピーダンス|RLC回路の電流・電圧・力率(準備中) | 抵抗、コンデンサ、コイルをインピーダンスとして表し、交流回路の電流、電圧分担、位相、皮相電力を計算できるようになる。 |
| STEP 12 | ダイオード回路の計算|順方向電圧・整流・LED電流制限(準備中) | ダイオードの向き、順方向電圧、逆方向遮断を使い、整流回路とLED直列抵抗の電流を計算できるようになる。 |
| STEP 13 | トランジスタとMOSFETのスイッチ回路|負荷電流・駆動条件・損失(準備中) | BJTとMOSFETをスイッチとして使う回路で、ベース電流、ゲート条件、オン抵抗による損失を見積もれるようになる。 |
| STEP 14 | リレー・ソレノイド・小型モータの駆動計算|誘導性負荷と保護回路(準備中) | コイル抵抗、定格電流、突入電流、フライバック保護、接点容量を計算し、制御出力で負荷を駆動する条件を読めるようになる。 |
| STEP 15 | センサ入力回路の読み方|プルアップ・分圧・オープンコレクタ・ADC(準備中) | スイッチ入力、オープンコレクタ出力、分圧センサ、ADC入力で、ON/OFF電圧と入力電流を計算できるようになる。 |
| STEP 16 | 基本回路図を電源から読む手順|電圧・電流・信号・保護を一枚で追う(準備中) | 電源、GND、保護素子、入力、出力、負荷を順に追い、各部の電圧・電流・電力を表にして検算できるようになる。 |
まとめ
- 電気回路は、単位・符号・基準点をそろえると計算で読めます
- 直流抵抗回路から始めると、分圧・分流・内部抵抗・発熱へ自然につながります
- 電力と配線損失まで見ると、抵抗値だけでなく部品定格を判断できます
- RC・RL の時定数を見ると、センサやコイルの時間変化を説明できます
- 最後は制御入出力を、電源から負荷、帰り道まで数値で追います
